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自宅サーバーをミニ PC で作ろうとしても、「N150」のような省電力の CPU で足りるのか、メモリは何 GB 必要なのか、24 時間稼働させ続けて電気代や熱は問題ないのかは、スペック表を見ただけでは分かりません。2026 年はメモリと SSD の値上がりが続いていて、「N100 のミニ PC なら 2〜3 万円で買える」という以前の前提も、そのままでは当てはまらなくなっています。
私はこのサイト(ryusei.io)と「X Space Downloader」などのツールを合わせた 6 つのサイトを、2025 年 11 月から「Minisforum UM870 Slim」1 台で運用しています。サイトが少なかったうちは、「ConoHa VPS」のメモリ 4 GB のプランで足りていました。Minisforum の公式ストアでメモリ 32 GB・SSD 1 TB の整備済み品が 54,000 円で出ていたのを見つけて、自宅のミニ PC へ移しました。
この記事では、自宅サーバー用のミニ PC の選び方と、条件を決めて選んだおすすめの 4 機種を紹介します。あわせて、私の環境で測ったメモリの使用量や SSD の消耗と、24 時間稼働させたときの電気代の目安も載せています。
この記事でわかること
- 自宅サーバーにミニ PC が向いている理由
- 自宅サーバー用のミニ PC の選び方
- 自宅サーバーにおすすめのミニ PC 4 機種
- 24 時間稼働させたときの電気代の目安
- 停電や故障への備え
Linux と Docker の基本的な操作ができる人を想定しています。自宅のサーバーを外部に公開する方法は別の記事で説明しているので、この記事では扱いません。
自宅サーバーにミニ PC が向いている理由
自宅サーバーは 24 時間稼働させ続けるので、性能の高さよりも、待機しているときの消費電力と、置き場所や音のほうが毎日の負担に関わります。ミニ PC は待機時の電力が小さい機種が多く、大きさも、私の UM870 Slim で 13 cm 角・厚さ 5 cm ほどです。x86 の CPU を積んでいるので、Docker のイメージや Linux のソフトを VPS と同じように運用できます。
比べる相手になりやすい VPS と「Raspberry Pi 5」との違いは次のとおりです。
ミニ PC | VPS | Raspberry Pi 5 | |
|---|---|---|---|
CPU | x86(Intel・AMD) | x86 が中心 | Arm(Cortex-A76 の 4 コア) |
メモリ | 機種による(SO-DIMM なら差し替えられる) | プランで決まる | 最大 16 GB(基板に直付け) |
費用 | 本体の購入費と電気代 | 月額(メモリ 32 GB で月 13,530 円から。36 か月契約) | 本体の購入費と電気代 |
停電・故障 | 自分で備える | 事業者が備える | 自分で備える |
VPS の月額は、このサイトの VPS の比較記事で 2026 年 9 月に調べた値です。Raspberry Pi 5 の仕様は公式サイトの記載で、メモリは最大 16 GB、ストレージは microSD か、別売りの拡張ボードで NVMe の SSD をつなぎます。
私が VPS から自宅のミニ PC へ移したのは、費用を抑えるためと、運用しているサイト群を「Claude Code」で一元管理するためです。メモリを 32 GB にしたのは、今運用しているツール系のサイトがメモリを多く使う傾向にあることと、今後のサイトの拡充に備えるためでした。
メモリ 32 GB の VPS は最も安いプラン(36 か月契約)でも月 13,530 円かかりますが、整備済みの UM870 Slim は 54,000 円だったので、4 か月分の月額で本体を買えた計算になります。今サーバーのために払っているのは、IPv4 の入口にしている ConoHa VPS のメモリ 1 GB のプラン(月約 700 円)と電気代です。
ミニ PC の弱点
ミニ PC は 1 台で完結するぶん、部品が壊れたときの代わりがありません。VPS のように事業者が電源や回線を二重にしているわけではないので、停電と故障には自分で備える必要があります(後半の「停電や故障への備え」で説明します)。
もう 1 つは拡張の余地が小さいことで、多くの機種は SSD を差すスロットが 1〜2 本しかなく、3.5 インチの HDD は入りません。動画や写真をためるファイルサーバーにするなら、NAS や USB 接続のストレージと組み合わせることになります。
自宅サーバー用のミニ PC の選び方
選ぶときに見るのは CPU・メモリ・ストレージ・LAN の 4 つです。このうち CPU は後から替えられず、メモリも今は差し替えると高くつくので、運用するサービスを先に決めてから選びます。
CPU は 3 つの層から選ぶ
2026 年 10 月時点で買えるミニ PC の CPU は、大きく次の 3 つの層に分けられます。負荷をかけたときの電力は、各層の機種を第三者が測った値です(出典は後半の各機種の説明にあります)。
層 | CPU の例 | コア / スレッド | メモリの上限 | 負荷時の電力 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|---|
省電力 | Intel N150 | 4 / 4 | 16 GB(1 チャネル) | 約 26〜32 W | ファイル共有・VPN・コンテナ数個 |
旧世代の Ryzen | Ryzen 5 7530U | 6 / 12 | 64 GB | 最大 43.5 W | Web サービスと DB を数個・仮想マシン数台 |
高性能 | Ryzen 7 8745H / 8745HS | 8 / 16 | 64〜96 GB | 最大 86〜95 W | ビルドや動画の変換・仮想マシン多数 |
3 つの層では、負荷をかけたときの電力に差が出ます。待機しているときの電力は、第三者の測定ではどの層も 4〜13 W に収まっています。N150 の機種にすれば電気代が大きく下がると考えがちですが、1 日の大半を待機している自宅サーバーでは、CPU の層による電気代の差はほとんど出ません(計算は「24 時間稼働させたときの電気代の目安」で示します)。
「N100」と「N150」は、どちらも 4 コア 4 スレッド・TDP 6 W の CPU です。N150 は 2025 年に出た後継で、最大クロックが 3.4 GHz から 3.6 GHz に上がっています(Intel の仕様)。どちらもメモリは 16 GB までしか使えないので、仮想マシンを何台も稼働させる用途には向きません。また、2026 年 10 月 2 日に確かめたところ、Amazon のミニ PC の売れ筋の上位 100 件に N シリーズの機種は 5 件しかなく、1 位の Mac mini を除くと、2〜5 位は Ryzen 5 3500U などの旧世代から Ryzen 7 8745HS までの、Ryzen を積んだ機種でした。
私の UM870 Slim は Ryzen 7 8745H です。CPU で選んだわけではなく、決め手は整備済み品の値段でした。6 つのサイトを運用していても、普段の CPU の使用率は平均 1.6% です。負荷が上がるのは、Next.js のビルドと、X の動画や音声を変換している間だけです。
メモリは実際に使う量から決める
2026 年は、部品の中でもメモリの値上がりが特に大きくなっています。AKIBA PC Hotline! の店頭価格の調査では、ノート PC 用の DDR5-5600 16 GB×2 枚組の平均価格が、2025 年 9 月後半の 13,602 円から 2026 年 9 月後半には 84,746 円になりました。必要以上に積むと費用がかさむので、運用するサービスが実際にどれだけ使うかを見てから決めます。
私の環境では、現在 15 個の Docker コンテナが稼働中で、それぞれのサービスで占有しているメモリは次のとおりです(2026 年 10 月 2 日に docker stats で計測)。
サービス | 内容 | メモリ |
|---|---|---|
X Video Downloader | アプリ本体 | 1.46 GiB |
X Space Downloader | ダウンロードしたファイルの置き場(S3 互換のストレージ) | 1.43 GiB |
X Space Downloader | アプリ本体 | 1.11 GiB |
X Video Downloader | ダウンロードしたファイルの置き場 | 0.95 GiB |
ryusei.io(このサイト) | Next.js と Payload CMS | 0.91 GiB |
世界の遊び工房 | アプリ本体 | 0.36 GiB |
Transcriber | アプリ本体 | 0.23 GiB |
Media Tools | アプリ本体 | 0.19 GiB |
共通(7 個) | データベース 3 個・Redis 2 個・nginx・画像のキャッシュ用のストレージ | 0.19 GiB |
合計 | 約 6.8 GiB |
OS 全体で使っているメモリは、ファイルのキャッシュを除いて 8.0 GiB です。残りの 21 GiB は空いています。ただし、このサイトの Next.js の本番ビルドはヒープの上限を 8 GB にしています。同じ機械でビルドを走らせると、その間だけ使用量が大きく増えます。
Web サービスを運用するだけなら 16 GB に収まる量ですが、同じ機械でビルドもするなら、ビルド中の分を足して 32 GB あると余裕があります。
ベアボーンより完成品のほうが安いことがある
メモリと SSD を積まない「ベアボーン」を買って部品を自分で足す方法は、以前は完成品より安く済むのが普通でしたが、今は逆になることがあります。
UM870 Slim の公式ストアの価格(2026 年 10 月 2 日)は、ベアボーンが 51,199 円、メモリ 32 GB・SSD 1 TB の完成品が 147,999 円です。同じ時期の店頭の平均価格でメモリ 16 GB×2 枚(84,746 円)と SSD 1 TB(30,765 円)をそろえると、115,511 円かかります。ベアボーンと合わせると 166,710 円になり、完成品より 18,711 円高くなります。
手元に DDR4 のメモリが余っているなら、DDR4 を使う機種を選んで流用する方法もあります。後で紹介する「GEEKOM A5 Pro 2026 Edition」は、DDR4 のメモリを 2 枚まで差せます。
ストレージと LAN
私の環境では SSD 1 TB のうち 268 GB を使っていて、大きいのは Docker のボリューム(55 GB)とビルドのキャッシュ(23 GB)です。SSD を差すスロットは機種によって 1 本か 2 本なので、データが増える見込みがあるなら 2 本ある機種を選びます。私は 1 本だけ使っています。
LAN は 2.5 Gbps に対応したポートを持つ機種が増えていて、今回紹介する 4 機種もすべて 2.5 Gbps です。ポートが 2 つある機種なら、ルーターの役割を持たせたり、仮想マシンのネットワークを分けたりできます。私の UM870 Slim はポートが 1 つですが、Web サービスを運用するだけなので足りています。
自宅サーバーにおすすめのミニ PC 4 機種
次の 4 つの条件をすべて満たす機種から、CPU の層ごとに選びました(2026 年 10 月 2 日に確認)。
- Amazon.co.jp で在庫があり、メーカーかその販売店が出品している
- 有線 LAN が付いている
- メモリが 16 GB 以上で、差し替えられる(基板に直付けではない)
- 消費電力を第三者が測った結果が公開されている
N150 の層だけは、条件をすべて満たす機種が見つかりませんでした。「Beelink MINI-S13 Pro」は、消費電力の測定が無いことと、メモリを差し替えられるかを確かめられていないことを承知で載せています。私が実際に使っているのは UM870 Slim だけです。ほかの 3 機種は、仕様と第三者のレビューで比べて選びました。
機種 | CPU | メモリ | SSD のスロット | LAN | 待機時の電力(第三者の測定) |
|---|---|---|---|---|---|
Minisforum UM870 Slim | Ryzen 7 8745H | DDR5×2・最大 96 GB | M.2×2 | 2.5 Gbps×1 | 5.2 W/約 13 W |
GEEKOM A8 | Ryzen 7 8745HS | DDR5×2・最大 64 GB | M.2×1 | 2.5 Gbps×1 | 平均 5.5 W |
GEEKOM A5 Pro 2026 Edition | Ryzen 5 7530U | DDR4×2・最大 64 GB | M.2×1、M.2 2242(SATA)×1 | 2.5 Gbps×1 | 平均 4.3 W |
Beelink MINI-S13 Pro | Intel N150 | DDR4 16 GB(増やせない) | M.2 を 1 本追加できる | 2.5 Gbps×2 | 測定なし |
Minisforum UM870 Slim(私が使っている機種)
Ryzen 7 8745H を積んだ厚さ約 5 cm の機種で、メモリは DDR5 を 2 枚・最大 96 GB まで、SSD は M.2 を 2 本まで差せます。私は 2025 年 11 月に Minisforum の公式ストアで、メモリ 32 GB・SSD 1 TB の整備済み品を 54,000 円で買い、それ以来 6 つのサイトを止めずに運用しています。
第三者の測定では、Windows で待機しているときの電力が igor'sLAB で 5.2 W、heise で約 13 W、負荷をかけたときの最大は 86〜95 W でした。LAN は Realtek の 2.5 Gbps のポートが 1 つです。
保証は、公式ストアで買うと 24 か月、Amazon の出品は 12 か月です(2026 年 10 月 2 日の各ページの記載)。長く使うつもりなら、公式ストアの保証ポリシーも見比べてから選ぶと、保証の長さの違いが分かります。
GEEKOM A8(Ryzen 7 8745HS)
UM870 Slim とほぼ同じ性能の CPU を、一辺 11 cm ほどの小さな筐体に収めた機種です。Notebookcheck の測定では、待機時が平均 5.5 W、負荷をかけたときが平均 67.6 W・最大 93.9 W でした。
注意する点は、SSD を差すスロットが 1 本だけであることと、裏ぶたを開けるには接着されたゴム足をはがす必要があることの 2 つです。どちらも Notebookcheck と CNX Software のレビューで指摘されていて、ゴム足をはがすときに Wi-Fi のアンテナ線を傷めやすいとも書かれています。
GEEKOM の日本法人の通販は 36 か月の保証を付けていますが、保証の規定では日本法人から直接買った製品に限られます。Amazon の出品の販売元は深圳の会社で、保証については出品ページの「3 年保証」の記載しかありません。
GEEKOM A5 Pro 2026 Edition(Ryzen 5 7530U)
Zen 3 世代の Ryzen 5 7530U(6 コア 12 スレッド)を積んだ機種です。4 機種の中では負荷をかけたときの電力が最も小さく、Notebookcheck の測定で待機時が平均 4.3 W、負荷時が最大 43.5 W でした。
メモリが DDR4 なので、手元に余っている DDR4 を流用できます。SSD は M.2 の 2280 が 1 本と、SATA 接続の 2242 が 1 本です。Notebookcheck では、USB4 が無いことと、BIOS で変えられる項目が少ないことが短所に挙げられています。
Beelink MINI-S13 Pro(Intel N150)
4 機種の中で唯一の N150 の機種で、2.5 Gbps の LAN が 2 つ付いています。メモリは DDR4 の 16 GB で、N150 の仕様の上限が 16 GB なので、それ以上には増やせません。
この機種は消費電力を測ったレビューが見つからず、メモリを差し替えられるかも確かめられていません。参考として、同じ N150 を使う Beelink の「EQ14」は、Notebookcheck の測定で待機時が平均 8.9 W、負荷時が最大 31.6 W でした。
Beelink の保証は受け取りから 3 年ですが、個人での使用に限られ、修理には 15〜30 営業日かかると書かれています。問い合わせの窓口はメールで、日本法人は見つかりませんでした。
4 機種はいずれも中国のメーカーの製品です。Minisforum と GEEKOM は、日本法人が通販と修理の窓口を持っています。ただし保証の長さは買う場所によって変わるので、買う前に、出品者と保証の条件を確かめておく必要があります。
1 台で 6 つのサイトを運用している構成と負荷
私の UM870 Slim で運用しているのは、このサイトと 5 つのツールのサイトで、全部で 15 個の Docker コンテナに分かれています。直近 28 日間(2026 年 9 月 3 日〜30 日)のページビューは 6 サイトの合計で 31,871 で、サーバーが受けたリクエストは 1 日 6〜9 万件でした。
外からのアクセスは、IPv4 の入口にしている ConoHa VPS から IPv6 で自宅へ転送しています。自宅の中では nginx のコンテナが受けて、ドメインごとに各サイトのコンテナへ振り分けます。公開の仕組みは、後半の「ミニ PC をサーバーとして使い始めるまでの設定」で紹介する記事で説明しています。
2026 年 10 月 2 日の 8〜11 時(約 2 時間)、10 秒ごとにセンサーの値を記録した結果は次のとおりです。記録は今も続けていて、1 週間分がそろったら差し替えます。
項目 | 平均 | 最大 |
|---|---|---|
CPU の使用率 | 1.6% | 15.1% |
メモリの使用量(キャッシュを除く) | 8.4 GiB | 10.8 GiB |
チップ(CPU と GPU)の電力 | 6.6 W | 65.1 W |
CPU の温度 | 34.0℃ | 74.4℃ |
SSD の温度 | 24.2℃ | 25.9℃ |
普段は 16 スレッドの CPU に対して load average が 0.1〜0.2 ほどで、ほとんどの時間は待機しています。負荷が上がるのは、Next.js のビルドと、ダウンロードのサイトで動画や音声を変換している間です。
Ryzen 7 8745H は、Web サービスを運用するだけなら余る性能です。私はこの CPU に内蔵された「Radeon 780M」を、文字起こしのモデルを GPU で動かす検証にも使っています(下の記事)。

AMD Ryzen 8000シリーズのRadeon 780M(内蔵GPU)とROCm 6.4.1、whisper.cppを使った高速文字起こし環境の構築方法を解説。Minisforum UM870での実例付き。量子化モデル活用でNVIDIA GPU不要。Ubuntu Server 24.04対応。
24 時間稼働させたときの電気代の目安
私はコンセント側の電力計を持っていません。そのため、同じ機種を第三者が測った値と、私の機種のセンサーの値から電気代を見積もります。電気代は、家電の表示に使われる目安単価の 31 円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会)で計算しています。
31 円/kWh で 1 W を 1 か月(30 日)使い続けると、電気代は約 22 円です。これを各測定値に当てはめると次のようになります。
電力 | 測定の条件 | 1 か月の電気代 |
|---|---|---|
5.2 W | UM870 Slim を Windows で待機(igor'sLAB) | 約 116 円 |
約 13 W | UM870 Slim を Windows で待機(heise) | 約 290 円 |
平均 8.9 W | N150 の EQ14 を Windows で待機(Notebookcheck) | 約 199 円 |
6.6 W | 私の UM870 Slim のチップの電力(10 月 2 日の約 2 時間の平均) | 約 147 円 |
約 90 W | 負荷をかけ続けた場合(参考) | 約 2,009 円 |
センサーで読めるのは CPU と GPU を含むチップの電力だけで、SSD や LAN、電源アダプターで失われる分は入っていません。第三者の待機時の測定(5.2〜13 W)と、チップの電力に SSD やメモリなどの分を足した値から、私の環境のコンセント側の電力は 10〜15 W ほど、電気代は 1 か月 220〜340 円ほどと見込んでいます。
N150 の EQ14 の待機時の電力は UM870 Slim の測定値と同じ範囲にあり、待機している時間が長い自宅サーバーでは、Ryzen の機種を選んでも電気代はほとんど変わりません。1 か月の差は 100 円前後に収まります。負荷のかかる処理を長く続ける使い方なら、その時間の分だけ差が出ます。
停電や故障への備え
ミニ PC 1 台で運用している場合、停電と部品の故障には自分で備える必要があります。私の環境で確かめたことと、実際にしていることを 4 つに分けて書きます。
温度とファンの音
私はミニ PC をマンションの自室に置いています。ファンの音が気になるのは、ffmpeg で動画や音声を変換する処理が増えたときで、そのときは少しうるさくなります。
2026 年 10 月 2 日の 8〜11 時(約 2 時間)の記録では、CPU の温度は平均 34.0℃・最大 74.4℃、SSD は平均 24.2℃でした。SSD が記録している値では、使い始めてから警告の温度(74℃)を超えた時間は 0 でした。
停電に備える(UPS と停電後の自動起動)
私はミニ PC とルーター・ONU を、Anker のポータブル電源「Anker 757 Portable Power Station」につないでいます。この電源は 1,229 Wh のバッテリーを積んでいて、コンセントから給電を受けながら機器に電気を送ります。停電すると約 20 ミリ秒でバッテリーからの給電に切り替わり、Anker の製品ページではこれを UPS 機能と呼んでいます。
3 台の合計の消費電力は測っていませんが、仮に 50 W とすると、1,229 Wh のバッテリーで単純に計算して 24 時間ほど稼働し続けられます。実際はインバーターでの損失の分だけ短くなります。ただし Anker は、データサーバーや医療機器など、不具合が起きると人命や財産に重大な危険を及ぼしうる用途には使わないよう案内しています。これまで停電は起きていませんが、コンセントからプラグを抜いて、バッテリーからの給電に自動で切り替わることは確かめています。それでも Anker が控えるよう案内している用途なので、同じ構成を勧めるものではありません。
もう 1 つが、停電で電源が切れた後、電気が戻ったときに自動で起動させる BIOS の設定です。UM870 Slim では、Advanced → AMD CBS → FCH Common Options → Ac Power Loss Options にある「Ac Loss Control」がこの設定です。既定の「Always Off」を「Always On」に変えると、電気が戻ったときに自動で起動します。GEEKOM A8 では「Power On Automatically After Power Loss」という項目で、既定は無効です(GEEKOM のヘルプ)。
私の機種の設定を確かめたところ、既定の Always Off のままでした。Anker 757 のバッテリーが切れるほど長い停電は起きないと考えて、このままにしています。UPS をつながずに使う場合は、Always On にしておかないと、停電のたびに手で電源を入れることになります。
故障に備えるバックアップ
1 台で運用している以上、SSD や本体が壊れたときは別のマシンで戻すしかありません。私は記事のデータベースやアップロードした画像、各サイトの設定ファイルを毎日 1 つのファイルにまとめて暗号化し、このミニ PC とは別の場所に保管しています。ファイルは 1 回分で 14 MB ほどになります。
2026 年 9 月 30 日に、OS を入れたばかりのマシンへ戻す練習をしたところ、6 つのサイトが動くまで 16〜19 分でした。かかった時間の大半は、各サイトの依存パッケージの取得とビルドです。
SSD の消耗と寿命の目安
ミニ PC を 24 時間稼働させると何年もつのかは、私の 11 か月の運用だけでは答えられませんが、先に消耗が表れやすい SSD の状態は数字で確かめられます。私の SSD(Kingston の 1 TB)は、2026 年 10 月 2 日の時点で次のとおりでした。
- 書き込んだ量:32.5 TB
- 使用率(メーカーが定める寿命に対する割合):8%
- メディアのエラー:0 件
- 警告の温度を超えた時間:0
整備済み品なので購入前の分が含まれている可能性はありますが、仮に 11 か月で 8% 進んだとしても、100% に届くまでには 10 年以上かかる計算です。SSD の状態は、smartctl を使わなくても読めます。udisks2 が入っていれば、次のコマンドで sudo なしで確かめられます。
# ドライブのパスを調べる
busctl --system tree org.freedesktop.UDisks2 | grep drives
# SMART の値を読む(パスは上で調べたものに置き換える)
gdbus call --system --dest org.freedesktop.UDisks2 \
--object-path /org/freedesktop/UDisks2/drives/<ドライブ名> \
--method org.freedesktop.UDisks2.NVMe.Controller.SmartGetAttributes '{}'出力の percent_used が使用率、total_data_written が書き込んだ量(バイト)、media_errors がメディアのエラーの件数です。
ミニ PC をサーバーとして使い始めるまでの設定
買ったミニ PC をサーバーとして使い始めるまでに、私がした設定は次の 4 つです。
- OS に「Ubuntu Server 24.04 LTS」を USB メモリから入れる(2026 年 4 月には 26.04 LTS も出ています)
- 外から届くように、サーバーの IP アドレス(私の場合は IPv6 アドレスの末尾)を固定する
- SSH を鍵認証だけにし、ファイアウォール(
ufw)とセキュリティ更新の自動適用(unattended-upgrades)を設定する - 「Docker」を入れて、サイトごとにコンテナを作る
仮想化の「Proxmox VE」を入れて仮想マシンに分ける方法もありますが、私は Ubuntu Server に Docker を直接入れています。Docker に慣れていて、サイトごとの環境をコンテナで簡単に作れるからで、Web サービスを運用するだけなら仮想マシンに分ける必要もありませんでした。
外部に公開する方法と、公開する前に入れておくセキュリティ対策は、次の記事にまとめています。

v6プラスやDS-LiteなどのIPoE回線でポート開放できなくても、VPSを入口にしてIPv6で自宅へ転送すれば公開できます。実際に運用している構成と設定、Cloudflare Tunnelとの比較、SSHでの外部接続、公開前のセキュリティ対策を解説します。
まとめ
自宅サーバー用のミニ PC は、待機時の電力が CPU の層によらず 4〜13 W に収まるので、電気代よりも、運用するサービスに必要なメモリの量と、保証を含めた買う場所で選ぶほうが失敗しにくくなります。私は整備済み品の UM870 Slim 1 台で 6 つのサイトを運用していて、メモリは 32 GB のうち 8 GB ほどしか使っていません。
- 待機時の電力は N150 の機種も Ryzen の機種も 4〜13 W で、私の環境の電気代は 1 か月 220〜340 円ほどと見込んでいる(31 円/kWh で計算)
- メモリは値上がりが大きいので、実際の使用量を見て 16 GB か 32 GB かを決める
- 今はベアボーンに部品を足すより、メモリと SSD を積んだ完成品のほうが安いことがある
- 停電に備えるなら、UPS と BIOS の自動起動の設定を確かめる
- 1 台で運用するなら、別のマシンへ戻せるバックアップを毎日とる
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